こちらの吉森保教授の記事を引用させていただきました。↓↓
(細胞が自分を食べる「オートファジー」。病気にも深くかかわる生命現象の謎に迫る(大阪大学・吉森保教授)2014/2/17 )
オートファジーって何?
オートファジーの「オート」は「自己」、ファジーは「食べる」(どちらもギリシャ語)。
簡単に言うと、細胞の中の余計なものを細胞自体が取り除くシステムだそう。
不思議なことに、小さな掃除機のような器官が突然現れ、細胞の中を掃除する!
古くなったり壊れたりしたたんぱく質やミトコンドリアといった細胞内の小器官は、これにより除去される。
さらにオートファジーがすごいのは、集めた“ゴミ”からたんぱく質の材料を作り出すところ。
成人男性は1日に約200gのたんぱく質を合成しているが、体内に取り入れるたんぱく質の量は60~80gしかない。その差は、オートファジーが補っている。
オートファジーってどんな現象?
最初に、細胞の中に扁平な二重の膜が現れる(=①)。
「扁平な二重の膜」とは、お椀のような形をした空気が抜かれたサッカーボールをイメージする。
これが掃除機にあたるもので、ミトコンドリアなどの細胞内小器官や古くなったたんぱく質を包み込んでいく(=②)。
完全に包み込み、丸い袋状になったものは「オートファゴソーム」は呼ばれ、直径約1μm(マイクロメートル=1mの100万分の1)の大きさ。
包み込むものも、選択している場合と選択していない(=無作為)場合があって、ここにも多くの謎が残されているそう。
図の下の段を見ると、オートファゴソームに小さな丸いものが近づいている。
これは「リソソーム」という器官で、そこにはたくさんの種類の分解酵素が入っている。
これが、オートファゴソームにくっついて融合(=③)。
一体となった袋状の「オートリソソーム」の中で、分解酵素がたんぱく質や細胞内小器官をアミノ酸などに分解する(=④)。
そうやってできたアミノ酸などが袋の外に出て、細胞内の工場のような場所で、新しいたんぱく質に合成しなおされる。
オートファジーと病気
神経にかかわる病気。神経細胞は他の細胞と違って分裂をしない。
そのため細胞の中にゴミがたまりやすいが、オートファジーが働かず異常なたんぱく質などが蓄積されると、アルツハイマー病やパーキンソン病といった病気になってしまう。
神経性疾患はオートファジーと極めて深い関係がある。
その他にも、糖尿病や動脈硬化、痛風、がん、クローン病などを、オートファジーによる「細胞内の清掃」が防いでいるらしい。
このうち、がんに関してはオートファジーの「働き過ぎ」も重要。
がんは飢餓状態に陥りやすい細胞で、オートファジーが活発でどんどん栄養をつくり出せばなかなか死んでくれない。
放射線や抗がん剤を使った治療を行ったとしても、自己修復して生き残ってしまう。
逆に言えば、オートファジーの働きを抑える薬があれば、がんに罹った患者さんの治療に使える。
アルツハイマー病などはオートファジーを促す薬で症状を抑えることが可能。
がんも予防に関しては「オートファジーの促進」のほう。
このように病気とオートファジーの関係が明らかになったことで、治療に向けた創薬が世界中で行われるようになった。