※この記事では全て、「妻(自分)が夫の扶養内で働く場合」を想定しています。
(この記事は2021年1月時点での最新情報に更新されています。)
個人事業主(フリーランス)でも、「夫の扶養の範囲内で働く」事が出来ます。
今まで、パートで働いていて、会社が扶養内で計算して働かせてくれていたので、自分ではほとんど無知な状態で働けていました。
しかし、セラピストに転身し、個人事業主になった途端、「確定申告」や、「扶養」、「税金」などのワードに向き合わなくてはならなくなり、チンプンカンプンな状態で1年目の確定申告。
いろいろと失敗を経て、現在に至りますゆえ、『妻(私)が個人事業主で、旦那の扶養内で働きたい。』という方は参考にしてくださいね。
《確認1》【税法上の扶養】「給与収入103万円の壁」と「所得48万円」のこと。
よく103万円の壁と聞きますが、それはフリーランスでも同じことですか?
まずは扶養の基本的なルールについて。
扶養の範囲内で働く、といっても「税法上の扶養」「社会保険制度における扶養」などがあります。
扶養内で働くというと、それぞれの適用条件等が違うので、まずこの2つから見て行きます。
扶養といってもいろいろなパターンがあるんです。
税法上の扶養とは?
税法上の扶養には、配偶者控除・配偶者特別控除の2つがあります。
配偶者控除・・・納税者本人の合計所得金額が1000万円以下でかつ、配偶者の年間所得が48万円以下の場合に適用。
配偶者特別控除・・・納税者本人の合計所得金額が1000万円以下でかつ配偶者の年間所得が48万円超133万円以下の場合に適用。
どちらも、適用されることによって、夫の税額(所得税・住民税)が安くなります。
ここでポイントは、配偶者控除・配偶者特別控除は「収入」ではなく妻の「所得」の額によって適用されるかが決まるということ!
フリーランスの場合は「事業所得」で見る!
パートやアルバイトの場合は、年収から給与所得控除の55万円を差し引いた金額が「所得」となり、それが48万円以下なら配偶者控除(扶養内)となります。
つまり、年間給与収入103万円(103-55=38万円)までなら、配偶者控除が適用される対象となるのです。これがよく言われる「103万円の壁」ですね。
フリーランス(個人事業主)の場合はパートやアルバイトとは違い、「年収-控除額-経費=事業所得」が重要になります。
<例>個人事業主として1年間で130万円稼いだとします。この場合「年収」は130万円。所得は、ここから「控除額」と「経費」を差し引いた金額です。青色申告の特別控除を65万円受けて、経費が50万円だった場合、130万円-65万円-50万円=15万円が所得になります。この場合、年収が103万円を超えていますが扶養に入ることができます。
パートやアルバイト・・・年間給与収入−給与所得控除の55万円=所得
フリーランス(個人事業主)・・・年間収入−青色申告特別控除(10万円、55万円、65万円)−経費=事業所得
なお、2020年から国の納税システムである「e-Tax」を利用して確定申告をしないと、要件を満たしていても65万円の青色申告特別控除を受けることができなくなりました。電子申告を利用していても、要件に従い帳簿を保存していない場合、控除額は55万円に下がります。(手書きで提出した場合、55万円になります。)
《確認2》【社会保険上の扶養】年収130万円未満。
では、社会保険上の扶養とは?
「社会保険上の扶養」とは、自分で社会保険料を納めるかどうかです。(社会保険とは厚生年金、健康保険、介護保険のこと。)
保険の扶養は、妻の年収130万円未満が基準となっています。
これがよく聞く「130万円の壁」ですね。
しかし、夫が加入する健康保険の規定によって条件が異なりますので、確認しておきましょう。
例えば、扶養条件が「年収130万円未満」だけの場合もあれば、「年収に加え、月収108,334円(108,334円×12ヶ月=1,300,008円)未満であること」といった条件が設定されている健康保険もあります。
さらにフリーランスの場合は「年収130万円未満」というボーダーが、経費等を差し引いた確定申告後の手取りの年収が130万円未満なのか、経費を引く前の金額が適用されるのかについても必ず夫の加入保険に確認しておきましょう。扶養から外れると、国民年金と国民健康保険の社会保険料を妻が自分で納める必要があり、手取り額が下がります。
全国健康保険協会の場合
収入の基準
被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入により生計を維持されていることが必要です。認定については、以下の基準により判断をします。
ただし、以下の基準により被扶養者の認定を行うことが実態と著しくかけ離れており、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなると認められる場合には、その具体的事情に照らし保険者が最も妥当と認められる認定を行うこととなります。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。
※自営業を営んでいる認定対象者の年間収入の算定にあたっては、収入から控除できる経費は事業所得の金額を計算する場合の必要経費とは異なりますので留意ください。
控除できる経費の例売上原価(一般所得)、種苗費、肥料費(農業所得)等
控除できない経費の例 減価償却費(一般所得、農業所得、不動産所得)等
《確認3》【家族手当上の扶養】夫の勤務先から支給される手当。
「家族手当上の扶養」といって、夫の勤務先から配偶者手当が支給される場合があります。
支給条件は、妻の年収が103万円未満というルールの会社が多いです。こちらも会社によるので夫の会社の総務・人事に確認しましょう。
例えば、手当が月1万5千円だった場合、年間で18万円になるので、結構大きい金額です。
※確定申告は、訂正申告もできる。
私は、この「家族手当の扶養」で失敗して、確定申告後に、再度訂正申告をしました。
(申告で誤りがある場合に、確定申告期間内であれば、訂正したものを再度申告する事が出来ます。申告期間外だと、別の書類などを出して、訂正申告をしないといけないそうです。)
みんな同じルールということではなく、加入健保や夫の勤務先によって条件があるので、確認しておいてください。
《確認4》【住民税】の課税は所得43万円から。
所得が48万円を超えると、妻本人に所得税が課税されます。
また、所得を48万円以下に抑えて配偶者控除の対象となったとしても、
住民税の場合は所得43万円を超えると課税されるので注意が必要です。
扶養範囲内で妻が損をしないには?
ではフリーランスの妻が働き損にならないためには、どのくらいの年収を目指せばいいのか?
先に説明したように「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」は条件が異なります。実際のところ金額が大きいのは「社会保険上の扶養」の方で、手取り金額に大きく影響します。
社会保険の扶養が外れると
☆国民年金保険料が年間約198,000万円(月16,500円)
☆国民健康保険料は年間約2〜3万円(所得に応じた金額になりますが、年収が130万円を少し超えたくらい・所得32万円と仮定して計算)
※国民健康保険料は所得が基準以下の場合に均等割額が減額される場合があります。詳しくはお住まいの自治体HPをご確認下さい。
となり、合計で年間で22万円程度手取りが減ることになります。
社会保険上の扶養を外れるラインが「年収」なのか「経費をひいた所得」なのかにより異なりますが、前者とすると妻の年収130万円~160万円は働き損になる可能性が高いです。
今後も社会保険上の扶養内で働きたいのであれば、扶養を外れるラインを夫の加入健保に確認の上、もし年収であれば、できるだけ月収が急増しないようにロールして130万円を超えないようにしましょう。
もし経費をひいた所得がラインであれば、青色申告の65万円の控除も使い、年収から経費と控除をひいた金額が、130万円未満になるようにしましょう。
夫の扶養から外れて働く場合は、年収か所得が最低でも年間160万円以上を目指すと、働き損にはならないでしょう。